「私の体力限界が120%だったとき、まだ20%って言うもんだから、本当に体力の差を感じたよ」私が山行から帰って、まぐろのカマ焼きをつまみに高清水を飲みながら友人に言うと、「表現おかしいでしょ。HPは減るもんなんだから、逆でしょうが」とすかさずツッコまれる。そりゃそうかと笑いながら「私の体力がマイナス20%だったとき、同行者は80%だったわけ」と言い直した矢先に、「体力ゲージにマイナスはないでしょうが」とまた指摘される。友人の呆れた顔が見れて私は大満足で、腹から笑ってしまった。帰ってきて良かった。
2021/10/9
体力も技術もない。7時間程登ったところで脚の付け根が痛みを増し、一歩前に進むのもやっとだった。それなのに急登は続く。本当に10月なのかと思う暖かさと、アルプスの山々が見渡せる天気の良さに励まされ、ようやっと山荘についた頃には15時を回っていた。
山で飲むビールの格別さよ。うまい 以外の言葉がない。
布団に潜ったのは18時半頃か、22時にアラームをかけるが誰も起きず。胸の痛みで目が覚めた、今回は大丈夫だと思ったのに高山病だ。横になると胸が痛くて眠れない。布団の上でヨガの猫のポーズをとってみる。
外に出てみると雲一つない空に星だらけ。風が出てきてダウンを着ていても少し寒い。ひとつの灯りもない山の上で、煙草の先端の燃える火と星だけが燃えている。
2021/10/10
南岳、中岳、大喰岳の山頂に立ち槍ヶ岳に向かう。体力は回復したものの、左足は上がらない。休憩を取りながらゆっくり尾根を歩いていく。
初めての槍ヶ岳、ジャングルジムのよう。手を離さなければ死ぬこともない。
下山が始まり帰りたくない病が発症する。下山つまんない、帰る理由がない、等文句を垂れて脚を引き摺る。昨晩、流れた星に他人のしあわせを願ったことを思い出し、下山の理由を見つける。
脚の炎症が最高潮に達し、痛み止めを増す。私のせいで日が落ちても下山できず、ヘッドライトを点けながら歩行。帰りの運転も任せきりで、出発地についたのは翌日明方4時だった。
今年の夏は天候に恵まれず山行が中止になる等、自分が体調を崩していたこともあってあまり登れなかった。一緒に登った二人には大感謝。また、行けたらいいな。