まだ燃えている火に、ささげる

足りないものを欠落しているというけれど、あの人の過剰な部分もまた欠落。私たちは空いた穴を埋めることに夢中だけれど、そのよく出っ張った部分が抱き合うたびに新しい傷をつけていることには気づかない。
かたちの無かったころ、ゼリーみたいに柔くてつるつるとしていて、手をつなげばよかった頃のことよく思い出す。
今はもうどこで何をしているかわからない友達たちもきっと思い出しているに違いない、鬱蒼とした木々の中、燃やした週刊誌、何が書いてあるかなんてどうでもよかった、私たちは燃えるものと燃えないもの、それだけ知っていればよかった。タヌキを探して走り回ったり、椎の実をぽけっといっぱいに詰めたり、どぶ川を渡ったフェンスに生る赤い味を食べる。煙があがって燃え盛る火、私たちはよく大人に怒られていたけれど、大人の知らないことを知っている自分たちが誇らしくて、げんこつされても目を合わせて笑っていたね。
違う言葉を話して、ピンヒールを履き鳴らしていても、スーツを身に纏った男の人も、どんな音楽を聴いていてもそんなことは一切関係がない。そんなことはどうでもよくて、くっついたり混ざり合ったりしていた私たちは、同じものを共有してわけあっていたあの世界が、今はもう何にも汚すことができないところにある。わたしはしきりに、そのあたたかさを求めるけれど、それは私たちにすら叶わないのかもね。
だけど、きっと身体の奥底でチロチロと燃えているあの火、あの温度を、裸で抱き合ったりしなくても共有できる、そんな友達たちの生活を、言葉なしに交差点ですれ違った目の奥に確認し合い、いのっている