夏が終わりかけて、秋が来たと思わせて、まだ蒸し暑い夜が続く。「夏が来なくなった」と私が言うと頷いた友達たちの元に、今年は夏は来ましたか?

授業中に青々とした稲が揺れるのを眺めていた。コンクリートに垂れた汗はすぐに蒸発した。それぞれの部活動の掛け声が休みなく響く、蝉の声と一緒に。わたしは土手に向かって自転車を走らせた。土手の横のサイクリングロードを走っていく。片耳にイヤホンを突っ込んで、向こうまで続く鉄塔を追い越しながら、隣の街までただひたすら漕ぐ。呼吸をするだけで息苦しく、寝苦しい熱帯夜が続いて、突然の雷雨にびしょ濡れになる。そんなうっとおしい夏がわたしはすきだった 「ほっといてくれよ」と言わんばかりの 横顔がちらつく 夏が来なくなった

会社に行こうとすると金木犀の香りがどこからか運ばれてきて わたしは思わず眉をひそめる。思い出みたいな香りが今年もしますね。また今年も秋はちゃんとやってくる。